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新型コロナウィルス

春の雪に想う

 このたび能登地方を震源とする大規模地震により犠牲となられた方々に心よりお悔み申し上げるとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。被災地域のみなさまの安全確保、一日も早い復旧・復興を衷心よりお祈り申し上げます。また、現地で対応される医療・介護の従事者の方々に深く御礼申し上げます。

 2月上旬、立春を過ぎてすぐの頃、東京を含む関東圏は大雪に見舞われた。警報級ということで、大混乱を避けるため、降り初めから高速の通行止めや、主要各線の運休、空路の欠航も相次いだ。深刻な事態にならずホッとはしたが、日常の生活や仕事を急遽遮断されてしまった方々は大変だっただろうと思う。

 今回は、メディアの騒ぎぶりも凄まじかった。注意喚起、という以上のものであったかと思う。実際の積雪は6センチということだから、雪国の方から見れば普段の光景。それでも、繰り返し、繰り返し、積雪の状況は全国的に放映された。能登の被災地に降る雪、災害級の豪雪はこの冬も全国各地頻繁にあったと思うが、そこまでの取り上げられ方ではなかったような印象で、今回の報道は特異に感じた。

 「それぞれの人が見ている風景が違っている」。ちょうど一年前、地域医療・介護研究会Japan(LMCの愛称でお馴染みかと)の第8回研究集会で、感染症対策分科会の会長を勤めた尾身茂氏(公益財団法人結核予防会理事長)が基調講演の中で、政府が収束を急ぐ当時のコロナ禍の状況をこう表現された。ふと、この言葉を思い出した。同じ雪でもそれぞれの人が違った景色として見ている。医療の現場も様々、それぞれの人が見える景色が異なる中で、全体に目を配らずに政策議論がなされ、社会の中でのわだかまりが増幅されていくことも想像に難くない。

 LMCと当研究所との共著で、今月「新型コロナウイルスとの闘いⅢ~明日への道標」が発刊される。これまで世に送り出したコロナ本の第3弾。今もなお続く、医療や介護の現場についての闘いの報告をまとめた。今もなお続く各施設での苦労や努力が生々しく語られている。ぜひ、お読みいただきたいと思う。

2024年2月7日

金子