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医薬品・医療材料

医薬品の年度末交渉に向かって

 3月の月初め、このコラムを更新します。昨日は、東北にある病院を訪問させていただきました。思いがけずの大雪でびっくりしました。記録的な暖冬だったと言われていますが、それらしい季節の景色に驚きも安心感も。この時期、医薬品の妥結交渉の支援で各施設を伺いますが、季節の変わり目、病院ごとに会議室から見える外の景色の季節感が全く異なるのだろうと思います。

 医薬品の交渉において、最近は「ベンチマーク」という言葉が一つのキーワードになっているかと思います。ここでのベンチマークは、一定量のサンプルデータの集計から得た指標価格ということですが、そもそも、ベンチマークという言葉は、19世紀の初めには使用されていた言葉のようです。当時、頻繁に利用されるようになった銃の性能を評価するために、印(マーク)を付けたベンチに銃を固定して、目標に銃弾を打つことによって照準の精度を確認しようとした、などが言葉の始まりとされているようです。それ以降、「基準」という意味でのベンチマークという言葉が使われ、ことビジネスの世界で定着しました。

 医薬品においても、価格の適正性、ガイドライン(「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」、まもなく改訂版が出される予定)風に言えば、医薬品の価値に見合った価格を議論するための基準点がここにあると考えるべきでしょう。もちろん、それだけであるべき価格が示されるわけではなく、ここを出発点として売り手、買い手が議論を尽くすということが重要なのだと考えます。

 流改懇で議論されたような特異なベンチマークの使用があったのかもしれません。が、それはベンチマークの意義を問うようなものではないはず。むしろデータの精度や、ベンチマーク数字を活用した理屈の是非を議論しなければならないのだと考えます。昨今の1社流通の横行に見られるように、本来買い手は弱い立場に置かれています。だからこそ、ベンチマークのような客観的な指標を活用して、理論武装をしていく必要があるのだと考えます。

 毎年改定の中で、企業側の価格防衛の意識は高まっています。医薬品については、相次ぐ供給不安も日々の業務に影響を与えています。交渉環境はますます厳しいですが、病院運営の安定化のため、施設全体が協力して年度末に成果を勝ち取りましょう。