病院経営に求められる継続的な課題

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K-13

原価管理体制について

前回、触れた手術室における「原価管理体制」について、少し考えてみたいと思います。
病院があげる収益、例えば症例ごとや診療科ごとの収益に対して、実際にどの位の費用がかかっているのかを個々に把握することは、経営管理の原点とも言えます。それなしに経営の意思決定や判断を行うことは、本来は至難の技であるはずです。
しかし、その一方で、様々な医療資源、つまり、人(人件費)、モノ(材料費や機器、建物)のコストを、細かく症例単位や診療科ごとに割り振って計算するのは、非常に難しいという問題があります。もちろん、医薬品や医療材料であれば特定しやすいかもしれません(実務として把握できるかどうかはまた別の問題ですが)。しかし、例えば、病棟に配属された看護師の人件費、さらには、その病棟全体を管理する師長のコストはどのように見るのか。建物のコスト(実際には損益計算上の減価償却費という項目になります)にしても、病棟、手術室、検査室などは面積相当でいいとしても、では共有部分はどうするか、など、実際にそうした計算を行うことは複雑多岐にわたります。
この固定費的な支出の配分については、事業会社においても同じような問題があり、それを克服する様々なメソッドが提案され、施行されていますが、その作業が非常に複雑で、最後は<判断>に委ねられることに違いはありません。
医療界では、そうした詳細な費用の把握は、10年以上も前に、診療科単位で収益と費用(そして最終利益)を把握しようというムーブメントとしてスタートしました。診療科ごとの収益はレセプトに対応しているので簡単であっても、費用については上記のような背景から、固定費部分を患者数で割ったり、あるいは収益の大きい診療科ほど費用が多く配分されるようにしたりと、というような事例が見られました。やり方も施設ごとにバラバラ、あくまでルールに従ってということであても、方法としては乱暴で稚拙なやり方です。
そうした診療科収益の把握は、病院運営の実態を少しは「見える化」したかもしれません。が、その共通コストの配分のルールによって、収益が大きく左右されるという結果になり、これが思いもかけず、有利に評価された診療科とそうではない診療科との間の摩擦が発生するという結果になりました。
現在、多くの病院が取り組んでいる原価管理体制の構築の動きはこれとは少し異なるものです。(続く)

 

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