病院経営に求められる継続的な課題

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No.N-21

基礎的医薬品の供給停止問題を考える

基礎的医薬品の供給問題が、病院運営に大きな不安を投げかけています。
基礎的医薬品とは、平成28年度薬価制度改革から試行的に導入された制度で、医療上の必要性が高く、医療現場において長期に渡り広く使用され、有効性・安全性が確立されている医薬品にも関わらず、度重なる薬価改定により、薬価が下がりすぎてしまい、不採算もしくは不採算になりかけている薬価を下支えする仕組みとして設けられた制度です。 今回、供給中止となっている日医工のセファゾリンも基礎的医薬品とカテゴライズされているもので、医療機関などの市場の約6割を独占していたので、非常に深刻な事態を引き起こしました。
そこで、セフェム系抗生物質製剤について調べたのですが、そこにはもっと大きな、本質的な問題があることがわかりました。セファゾリンナトリウム原薬の出発物質のひとつであるテトラゾール酢酸(TAA)が、世界で唯一中国TAAメーカーでしか製造されていないということです。セフェム系抗生物質を製造している医薬品メーカーはすべて中国のTAAメーカーに頼っているということです。日医工は中国のTAAメーカーとは別のTAAメーカーを検討し、その解決を目指していますが、そのTAAメーカーも薬価にあった材料を求めるのであれば中国しかないというのが現状だと思われます。中国の各TAAメーカーが一斉に供給停止となったら、どうなるのでしょうか?
この問題は、セフェム系抗生物質に限らず基礎的医薬品、同じく薬価が下がりすぎた医薬品、そしてひいては後発品全体にもいえることです。だいぶ古い資料ですが「後発医薬品の原薬調達状況に関する調査結果」をみると原薬の調達先が1箇所となっている品目が全体の76.8%、そのうち海外から調達しているのが40.8%を占めているとの結果がでています。
まず、調達先が1箇所というのはいかがなものでしょうか。何か調達先で事故が起これば供給できなくなるということです。それは安定供給といえるのでしょうか。
いまの国の施策は目の前の医療費削減にだけ目を向け、そしてそれを企業・医療機関等に押し付けているとしか見えません。少子高齢化の問題も約40年前、あるいはそれ以上前から分かっていたことです。
もっと将来を見据えた施策はできないものでしょうか。

PS
基礎的医薬品対象品一覧をみると、そのほとんどが日本企業が製造したものになっています。外資は不採算品を手放し営利を追求し、その煽りを受けているのが日本企業に思えます。これは医療上重要な薬剤ということで製造をせざるをえないという使命をもった企業が、製造し続けているのか、厚生労働省の指導のもと製造を続けているのかは分かりませんが、日本企業の成長にとって阻害となっているのは確かだと思われます。この環境を整備するには、付け焼き刃的な対処では不十分で、構造的かつ本質的な問題に手をつけなければならないと感じます。

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