病院経営に求められる継続的な課題

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n-21

No.N-22

令和元年度上期の薬価交渉を目前にして

今年も早いもので上期の薬価妥結に向けた交渉時期を迎えました。今年は10月に消費税増税に伴う薬価改定があるため、上期での未妥結品目は出せないと考え、交渉を進めてください。
ある公的病院を束ねる機関が平成30年度末の医薬品値引き率調査を行ったのですが、地域による格差が拡大しているという結果が出ていました。一番成績が良いのは近畿・東海ブロックで、一番悪いのは東北ブロックとなっており、その差がなんと1.34%ポイントありました。「なんだ1.34%程度か!?」と思われるのは間違いで、薬価で10億円分購入していると、およそ1,400万円の価格差が出てしまいます。侮るなかれ、です。
病院の支出項目では人件費に次いで医薬品費の占める割合が大きく、病院経営にとってその購入費用削減は重要な課題です。ちなみ同じ機関が調べた平成30年度末の総価での平均値引き率は12.6%でした。
ここで注意すべきは、オーファンドラッグや上市されて間もない抗がん剤を多く使用している病院の総価での値引き率は全体平均より悪くなる傾向があり、後発品や長期収載品、一般先発品を多く使用している病院での値引き率は相対的に良くなると考えられます。
つまり12.6%というのは総価での話です。実際は単品単価で交渉し、それが積み重なった結果、総価に対する値引き率が導き出されます。厚生労働省は薬の価値に合った価格で購入するよう求めていますので、他施設実績をベンチマークで確認の上、その中央値を目指した交渉を行ってください。但し、今出ているベンチマークは今年3月時点でのベンチマークであることも注意しておく必要があります。
ちなみに、過去の医薬品値引き率の推移を調べたのですが、興味深い傾向があることが分かりました。薬価改定のあった年の最終値引き率と、次の年の最終値引き率を比較すると1%弱の前進があることが分かりました。つまりこの上期の総価での値引き率目標は昨年度末最終値引き率から1%ポイント前進させることを目標としていいのではと考えます。これも総価での1%なので、単品単価での交渉の結果1%ポイントの前進があればいい、ということです。
それから今後もう一つ注意しておくべきことがあることを言っておきます。10月の薬価改定です。今回もマイナス改定となり、病院がダメージを受けるのは必至です。上期での薬価差益、即ち真水がいくらあったのかを計算しておき、下期にその真水と同等額が得られるような対策が必要です。先発品を後発品に変える、後発品を先発品に戻す、同種同効品をまとめ、フォーミュラリー的にファーストチョイス・セカンドチョイスという考えを取り入れるなど、今後はそうした院内の取り組みがなければ、単に価格交渉だけで経済的メリットを生みだすのは難しくなると思われます。
厚労省は目の前の医療費を削減することしか考えておらず、それが将来の医療にどのような影響を与えるかということを真剣には考えていないように感じております。抗生剤、基礎的医薬品の問題をみてもそう思わざるを得ない状態です。

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