病院経営に求められる継続的な課題

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No.N-26

公的病院再編要請リスト公表への怒り

消費税増税に伴うこの10月の診療報酬改定は、医薬品や診療材料を多く使用している病院、あるいは検査を多く実施しているような病院、即ち急性期度の高い病院にとっては、実質的なマイナス改定の意味合いが強く、今後の病院運営は一層厳しくなるものと考えられます。その一方で、地域医療構想に関するワーキンググループ(WG)からは将来的な統廃合の再検証を要請する医療機関として424病院のリストが公表されました。しかし、このリストにある施設は単月の診療実績だけの基準で機械的に選ばれており、選定方法として非常に乱暴で、迷惑を被っている病院が多々出てきています。厚生労働省は財務省の指示通りに、目の前の医療費削減ばかりに目がいき、将来の地域医療のビジョンが立てられないようになってしまっていると思えるのは私だけでしょうか。
私が伺っている青森県黒石市国民健康保険黒石病院(許可病床数257床 うち包括ケア病床90床、以下黒石病院)も、さきの424病院の一つとして公表されました。私は当院を地域医療を支える重要な基幹病院であると信じていますし、今回の公表があってもその考えは変わりません。もしこの病院がなくなれば、黒石市自身が消滅する恐れがあるのではとさえ思っています。
この地域はクリニックも少なく、黒石病院自身がクリニック(外来診療)の役割も果たしており、地域の需要に合った医療提供体制をとっています(医局人事のために小児科の常勤医はいなくなり、また、お産もできませんが)。また地域医療構想では、類似かつ近接する病院があるのかを評価基準として挙げていますが、黒石病院にとっての類似(本当に類似と言えるかどうかはさておき)、かつ近接病院はおよそ車で23分のところに(グーグルマップ上)あるのですが、これが雪の時期になるとその倍以上の時間を要するのです。これが地域医療構想で定義される近接病院、車でおよそ20分圏内に当てはまるのでしょうか。
さらに、地域医療構想の病床機能として、黒石病院は全ての病床が急性期とカテゴライズされていますが、包括ケア病床を急性期としてカテゴライズされていいのでしょうか。 黒石病院は患者のニーズに合った医療を提供するために、一部回復期病床への機能転換を見据えた調査・研究も行っています。外来診療・急性期病棟・包括ケア病棟・回復期病棟、さらには他施設との連携にも重点を置き、その地域の住民が安心して暮らせる医療・福祉を提供しようとしています。
今回の地域医療構想のWG、即ち厚生労働省は、2年前のしかも単月という稚拙なデータを基に再検証要請対象病院を公表するという、非常に乱暴な行為に出たと思います。邉見先生のよく言われる、現場に行って、現物を見て、現実的に考える、そういう政策立案においてあるべき精神が、今回の地域医療構想の策定作業の中にはどこにも見当たらないのが非常に残念でたまりません。

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