病院経営に求められる継続的な課題

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フォーラムNo.N-32

コロナ禍の中で

* 今回は、7月出版予定の「第一次コロナ戦争と病院崩壊(仮題)」に載せる予定の草稿の一部を掲載します。

●進まない検体検査と陽性率

日本ではピークは過ぎた感はあるものの新型コロナウイルス感染患者数は増え続けています。その要因のひとつにPCR検査数の少なさにあると、これは日本中の人々が感じていることと思われます。症状の軽い人は検査してもらえず、サイレントキャリアは全く確認されず、軽症もしくは無症状患者から人に感染するのは当たり前のことです。日本の新型コロナウイルスに対するPCR検査数はOECD加盟国36か国中35位と際立つ少なさです。人口1000人当たりアイスランドは135人、ドイツで25.1人、韓国で11.7人、そして日本は1.3人と際立った少なさです(5月初旬時点、Our World in Data集計データ等)。
当初は検査機器の少なさが、検査件数が少ない要因のひとつと言われてきましたが、その検査機器を取り扱うメーカー、民間の検査会社に問い合わせたところ、PCR検査用キットの注文がない、オーダーが全然入ってこないといわれていました(2月下旬の話)。

1社だけですが調査で分かったこと

ロシュ社    コバス8800  日本に11台設置  処理可能最大件数 32,340件/日
コバス6800  日本に24台設置  処理可能最大件数 27,648件/日
トータル 59,988件/日

PCR検査ができる器機は日本ベクトン・ディッキンソン社製、アボット・ジャパン製、シスメックス社製、などが日本に設置されている

WHO(中国よりで疑問を持っているが)も、まず基本は「検査と隔離」と言っています。PCR検査件数がなかなか増加しなかった原因として6つの要因を専門家会議で挙げられました。そのなかで保健所の業務過多を訴えていましたが、その原因を作ったのも実は政府です。(この点については後述)。そして医師が必要と判断するPCR検査を保健所が認めないということを引き起こしてしまったのです。
また、PCR検査において「検体を運ぶためには特殊な輸送機材が必要」ということで、地方衛生研究所と医療施設を優先して検査させることにしてしまいました。医療施設ではほかの検査もあり、また人員の問題もあり、PCR検査に特化するわけにはいかなく、なかなか検査数を増やすことができなかったというのが実情みたいです。もっと民間検査会社を利用した体制作りをしておけばもう少し検査数は増えていたはずです。
そしてもう1つの課題が、医療崩壊を起こさず隔離をどうするかということです。しかしその隔離の問題も今や(5月7日)ある程度解決し、軽症者はホテルでの滞在、中・重症者は医療施設での治療という方向になりました。
しかし、ここでまた問題がでてきています。これだけ検査数が少ないにも関わらず、国として陽性率が把握困難という状況に陥っているのです。感染症対策専門家メンバーは陽性率を出すための手順を国に示していなかったのでしょうか?専門家メンバーも必要な検査件数なり確かな陽性率など基となるデーターが無い状態で政府に何が提言できるのでしょうか。

●深刻化する病院経営への影響

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、病院収益が大幅に悪化している。この度NPO法人 地域医療・介護研究会JAPAN(以下LMC)では、その実態を調査すべく、会員病院に対しアンケートをする予定です。新型コロナウイルス感染患者を受け入れている病院はもちろん、受け入れていない病院でもその影響は必至です。
昨年9月に政府・厚生労働省は効率至上主義の考えのもと、424病院の再編統合を求めるリストを公表しました。これは厚生労働省が何と弁解しようが、病院減らし、病床減らしを目的としたものにしか見えません。もし現実的に病院削減、病床削減が行われていたら、今回のコロナ問題はどうなっていたのでしょうか。LMC邉見会長の言われる「病院は警察や消防と同様に市民の健康や生命を守るものであり、赤字や黒字ばかりで議論すべきではない」という考え方は、全くそのとおりだと感じられます。今後、政府や厚労省はどういう対応をしてくるか注意深く見る必要があると思われる。

・・・この先が気になりましたら、ぜひ書籍の発売をお待ちください。

 

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