病院経営に求められる継続的な課題

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n-12

No.N-15

急変する委託企業の運営環境

各病院では目下、来年度の委託業務の内容やそれを担う委託企業の見直しが進められています。そのなかでも医療事務、患者給食、施設管理、清掃、警備といった分野では、ここ2~3年で委託企業の運営環境が大きく変化してしまいました。
病院にとって、「(委託)金額も重要だが、それ以上に質の担保、すなわち性能発注の考え方が重要である」ということが基本的な考え方であることが変わりませんが、委託企業の側で人を確保できないという、かつてはなかったような問題が発生しています。医療事務、患者給食、施設管理等を生業(なりわい)としている企業の幹部といろいろ話をしますが、人の募集をかけても応募してくる人が少ないそうです。近くにショッピングモールができようものなら今いる職員も辞めてしまい、そちらに行ってしまう状況であると伺いました。そして、そうした企業においては、今ある既存得意先を守るのが精一杯で、新規の営業をかけるどころではなないと、言われていました。今、業務受託企業は、人手不足をどう解決するかという根幹的な問題に、本腰を入れて取り組まざるを得ない状況となっています。
ある医療事務の会社では、AIの活用に取り組んでおり、人でなくてもできる領域について、人のレベルには左右されないチェック・システムを開発中とのことです。また、患者給食会社の中には、セントラルキッチン化を進め、調理師がいなくても給食が提供可能という提案をしているところがあります。
その一方で、施設管理や清掃、警備の企業では、どうしても人手に頼るところが多く、単独ではなかなか難しい問題です。そこで考えられるのが、施設管理・清掃・警備を一括発注する方法です。業務の責任者は1名で済み、各職種の連携も図られ、これがうまくいけば人の効率化、業務の効率化に結びつくはずです。これは2000年ごろに整備されたPFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)の賜物なのですが、一括受注できる企業がまだ限られているのが問題かもしれません。
国は一貫して医療費削減政策を推し進めていますが、少子高齢化に伴い働き手が減少し、その煽りを特に受けているのが、人手の必要な委託企業です。ここ2~3年は委託企業に多くを望むのは難しくなってしまっていることを病院の方々は理解しなければなりません。かといって、質を落とせば経営に支障をきたすことは理解されていると思います。
病院と強い信頼関係を築き、病院と一丸となって、業務改善や新しいスキルの開発に取り組まなければ生き残れない。それが、今の委託業界の現実だと思います。

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